名物カメラマン・嬉野雅道「自分の居場所って『いてもいいよ』って言ってくれる人のそば」
~導き出した人生の主導権~
ハンドルは自分で持つ
孤立するのは怖いです。僕だってひとりで生きてなんかいけないって思います。みんなと仲良くしたい。でもね、意味もなく孤立させられるのなら、そんな状況はそもそも「おかしい」と考えてみるべきだと思います。
「人の輪に溶け込めない自分が悪いのかな?」って思ってしまうことは、なんか奇妙な「罠」にはまっている感じがするんですよ。だってその人の輪が、そもそもおかしな状況なら、溶け込めるはずがない。
むしろそこから脱出しようっていう発想が出てきていいはずです。だって人生、命あってのものだから。緊急避難はアリですよ。
脱出したあと道が開けるかどうかは、まぁやってから分かることだけど、でも、家が火事で、もはや火を消してる場合じゃないのなら、とにかく脱出しないと生きていられないですからね。そうやって脱出して、ひとりで何も知らないところに出てしまう。
もちろん僕たち人間は、ひとりだけでは生きていけないし、「ひとり」って不安な言葉です。でも、そういう広いところへ出て、自分はひとりなんだなって身に染みて思うところから、意外に自分の人生が始まるんじゃないかと思うんですよね。
自分の人生の肩代わりをしてくれる人はどこにもいないんですよ。その意味において、人生は、ひとりなんでしょうね。自分の人生は自分でどうにかしなきゃいけないんです。
それに、「自分はひとりなんだな」って思うことがなかったら、人間には真剣な気持ちも湧いてこないし、勇気も湧いてこないんじゃないかな。
「ひとり」を噛みしめるときが人生の出発点なんでしょうね。そこを振り出しにいろんな道を歩いて、いろんなことを経験していく。もちろん、けがもするだろうけど、でも、それはこの世界では当たり前のことですよ。
そうやっていろんなけがをしながら、誰かと出会いながら、この世界がどうなっているかっていうことを、自分の命の最後の日まで自分の目で、自分の耳で、見て、聞いて、体験していく、それが人生ってものなんだと思います。
「こんなところにはいられない」「自分は奇妙な領域にいる」と思ったら、迷わずそこから出て行く。そうやって、ひとりで生きていこうと決意することを、不安じゃなくて冒険みたいにワクワクできたらいいなと思うんです。
ひとりで生きていくっていう出発点は重荷ではないはずです。むしろ、「ひとりで生きていくんだ」って思ってみたときから、僕らの人生は幸福な人生へと舵をきりはじめる。そんな気がします。
嬉野雅道(うれしの・まさみち)
1959年生まれ。佐賀県出身。『水曜どうでしょう』カメラ担当ディレクター(HTB 北海道テレビ放送)。大泉洋主演ドラマ「歓喜の歌」ではプロデューサーを務める。安田顕主演ドラマ『ミエルヒ』では企画、プロデュースを担当。同ドラマはギャラクシー賞テレビ部門優秀賞、文化庁芸術祭賞優秀賞など多くの賞を受賞した。2019年3月道内放送開始のHTB開局50周年ドラマ『チャンネルはそのまま!』ではプロデューサーを務めている。愛称は「うれしー」。著書に『ひらあやまり』、『ぬかよろこび』(KADOKAWA)、藤村忠寿との共著に『仕事論』(総合法令出版)など。最近はnoteで月刊マガジン『Wednesday Style』をはじめたり、ユーチューバーになったりと、活動の場を広げている。最新情報は、各種SNSをご確認ください。
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『生きづらさを抱えるきみへ』
著者:withnews編集部
2014年に朝日新聞社がスタートしたニュースサイト「withnews」内の1コーナーが「#withyou」です。この#withyouは2018年4月に始まった「生きづらさを抱える10代」に向けた企画で、「いじめ」や「不登校」、「DV」などを経験したことのある著名人(タレント、ミュージシャン、YouTuber、クリエイター等)が自らの体験談をサイトに掲載したものです。その体験談をひとつにまとめたのが本書。新生活が始まる中、「学校に行きたくない」「死にたい」といった悩みを抱え苦しむ人に、著名人たちが「自分も学校にいかなかった」「自分も不登校生活をしていたけど、今はしっかりと生活できている」「学校に行くだけがすべてじゃない」「好きなことをずっとやり続けていれば大人になっても暮らしていける」といった“安心できる”提案をしています。学校や友達付き合いに悩んでいる人に“学校に行きたくなければ行かなくても全然大丈夫”“今の時代、生きていく道はたくさんある。自ら死を選ばないで”という輪を広げていくことをいちばんの目的とした一冊です。